2台スタック構成での一時的なバージョンチェック無視機能
2台スタック構成での一時的なバージョンチェック無視機能は、2台スタック構成でのファームウェアのアップデート時に、一時的にスタックメンバーのバージョンチェック処理を無視する機能です。本機能を有効にするにはstack version check ignoreコマンドを使用します。
stack version check ignoreは、NP7000の1.11.01以降、NP5000の1.11.01以降、NP3000の1.11.01以降、NP2100の1.13.01以降、NP2500の1.12.01以降でサポートしています。
スタックを構成するすべての装置は、同一バージョンのファームウェアである必要があります。そのため、スタック構成でのファームウェアのアップデート時は、通常はスタック構成全体を再起動して、スタックを構成するすべての装置のファームウェアを同時にアップデートする必要があります。
2台スタック構成でのファームウェアのアップデート時にstack version check ignoreを有効にすると、一時的にスタックメンバーのバージョンチェック処理を無視し、スタックメンバー装置を1台ずつ再起動してアップデートすることができるようになります。
これにより、主にレイヤー2装置として利用するスタック構成において、ファームウェアのアップデート作業時のロス時間を少なくすることが期待できます。
なお、stack version check ignoreはファームウェアのアップデート作業時に一時的に有効にして、アップデート作業が完了したら無効に戻すことを想定しています。そのため、stack version check ignoreを有効設定のまま定常的に運用することは未サポートです。
stack version check ignoreは、2台スタック構成の場合のみサポートしています。3台スタック構成、または4台スタック構成で使用することは未サポートです。
本機能はあくまでスタックメンバーのバージョンチェック処理を無視する機能です。stack version check ignoreを有効にしても、スタック使用時の制限事項は変わらないことに注意してください。
stack version check ignoreを使用するには、ファームウェアのアップデート前とアップデート後の両方のバージョンで本機能がサポートされている必要があります。そのため、stack version check ignoreが未実装のバージョンに変更する際は、本機能は使用しないでください。
手順例(1)プリエンプトモード無効、2台スタック構成(その1)
この手順例ではスタックマスターの切り替わりは1回ですが、ファームウェアのアップデート前とアップデート後で、マスターの役割になる装置が変更されます。
手順例の前提条件は以下のとおりです。
- プリエンプトモードは無効。
- 実施前は、装置1(優先度10設定)がスタックマスター、装置2(優先度20設定)がバックアップマスターになっているとする。
- ファームウェアのアップデートにおける事前作業(新ファームウェアのダウンロード、boot imageコマンドによる次回起動時のブートイメージファイルの設定など)は完了済みとする。
- ファームウェアのアップデート前の状態を確認します。
・装置1:マスター
・装置2:バックアップ
-
stack version check ignoreコマンドで、一時的にスタックメンバーのバージョンチェック処理を無視するように変更します。その後、設定を保存して、show stackコマンドで確認します。
# stack version check ignore # # write memory Destination filename startup-config? [y/n]: y Saving all configurations to NV-RAM.......... Done. # # show stack Stacking Mode : Enabled Stack Preempt : Disabled Trap State : Disabled Port-channel mode : All Stack-port load-balance: default Version check : Disabled ※スタックメンバーのバージョンチェック処理を無視 ~~省略~~
- バックアップマスター(装置2)を再起動、または電源OFF/ONして、新ファームウェアにアップデートします。装置2が起動してスタック構成に取り込まれるのを待ちます。
・装置1:マスター
・装置2:バックアップ → バックアップ
- スタックマスター(装置1)を再起動、または電源OFF/ONして、新ファームウェアにアップデートします。装置1が起動してスタック構成に取り込まれるのを待ちます。この手順の実行時にスタックマスターの切り替わりが発生します。
・装置1:マスター → バックアップ
・装置2:バックアップ → マスター
-
no stack version check ignoreコマンドで、スタックメンバーのバージョンチェック処理を有効に戻します。その後、設定を保存して、show stackコマンドで確認します。
# no stack version check ignore # # write memory Destination filename startup-config? [y/n]: y Saving all configurations to NV-RAM.......... Done. # # show stack Stacking Mode : Enabled Stack Preempt : Disabled Trap State : Disabled Port-channel mode : All Stack-port load-balance: default Version check : Enabled ※スタックメンバーのバージョンチェック処理は有効 ~~省略~~
手順例(2)プリエンプトモード無効、2台スタック構成(その2)
この手順例ではスタックマスターの切り替わりは2回ですが、ファームウェアのアップデート前とアップデート後で、同じ装置がマスターになります。
手順例の前提条件は以下のとおりです。
- プリエンプトモードは無効。
- 実施前は、装置1(優先度10設定)がスタックマスター、装置2(優先度20設定)がバックアップマスターになっているとする。
- ファームウェアのアップデートにおける事前作業(新ファームウェアのダウンロード、boot imageコマンドによる次回起動時のブートイメージファイルの設定など)は完了済みとする。
- ファームウェアのアップデート前の状態を確認します。
・装置1:マスター
・装置2:バックアップ
-
stack version check ignoreコマンドで、一時的にスタックメンバーのバージョンチェック処理を無視するように変更します。その後、設定を保存して、show stackコマンドで確認します。
# stack version check ignore # # write memory Destination filename startup-config? [y/n]: y Saving all configurations to NV-RAM.......... Done. # # show stack Stacking Mode : Enabled Stack Preempt : Disabled Trap State : Disabled Port-channel mode : All Stack-port load-balance: default Version check : Disabled ※スタックメンバーのバージョンチェック処理を無視 ~~省略~~
- スタックマスター(装置1)を再起動、または電源OFF/ONして、新ファームウェアにアップデートします。装置1が起動してスタック構成に取り込まれるのを待ちます。この手順の実行時にスタックマスターの切り替わりが発生します。
・装置1:マスター → バックアップ
・装置2:バックアップ → マスター
- スタックマスター(装置2)を再起動、または電源OFF/ONして、新ファームウェアにアップデートします。装置2が起動してスタック構成に取り込まれるのを待ちます。この手順の実行時にスタックマスターの切り替わりが発生します。
・装置1:バックアップ → マスター
・装置2:マスター → バックアップ
-
no stack version check ignoreコマンドで、スタックメンバーのバージョンチェック処理を有効に戻します。その後、設定を保存して、show stackコマンドで確認します。
# no stack version check ignore # # write memory Destination filename startup-config? [y/n]: y Saving all configurations to NV-RAM.......... Done. # # show stack Stacking Mode : Enabled Stack Preempt : Disabled Trap State : Disabled Port-channel mode : All Stack-port load-balance: default Version check : Enabled ※スタックメンバーのバージョンチェック処理は有効 ~~省略~~
手順例(3)プリエンプトモード有効、2台スタック構成
この手順例ではスタックマスターの切り替わりは2回ですが、ファームウェアのアップデート前とアップデート後で、同じ装置がマスターになります。また、プリエンプトモードによるマスター切り替わり時のポート閉塞を伴うロスを避けるために、アップデート前に一時的にプリエンプトモードを無効に変更し、アップデート後にプリエンプトモードを有効に戻します。
手順例の前提条件は以下のとおりです。
- プリエンプトモードは有効。
- 実施前は、装置1(優先度10設定)がスタックマスター、装置2(優先度20設定)がバックアップマスターになっているとする。
- ファームウェアのアップデートにおける事前作業(新ファームウェアのダウンロード、boot imageコマンドによる次回起動時のブートイメージファイルの設定など)は完了済みとする。
- ファームウェアのアップデート前の状態を確認します。
・装置1:マスター
・装置2:バックアップ
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no stack preemptコマンドで、一時的にプリエンプトモードを無効に変更します。stack version check ignoreコマンドで、一時的にスタックメンバーのバージョンチェック処理を無視するように変更します。その後、設定を保存して、show stackコマンドで確認します。
# no stack preempt # # stack version check ignore # # write memory Destination filename startup-config? [y/n]: y Saving all configurations to NV-RAM.......... Done. # # show stack Stacking Mode : Enabled Stack Preempt : Disabled ※プリエンプトモード無効 Trap State : Disabled Port-channel mode : All Stack-port load-balance: default Version check : Disabled ※スタックメンバーのバージョンチェック処理を無視 ~~省略~~
- スタックマスター(装置1)を再起動、または電源OFF/ONして、新ファームウェアにアップデートします。装置1が起動してスタック構成に取り込まれるのを待ちます。この手順の実行時にスタックマスターの切り替わりが発生します。
・装置1:マスター → バックアップ
・装置2:バックアップ → マスター
- スタックマスター(装置2)を再起動、または電源OFF/ONして、新ファームウェアにアップデートします。装置2が起動してスタック構成に取り込まれるのを待ちます。この手順の実行時にスタックマスターの切り替わりが発生します。
・装置1:バックアップ → マスター
・装置2:マスター → バックアップ
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stack preemptコマンドで、プリエンプトモードを有効に戻します。no stack version check ignoreコマンドで、スタックメンバーのバージョンチェック処理を有効に戻します。その後、設定を保存して、show stackコマンドで確認します。
# stack preempt # # no stack version check ignore # # write memory Destination filename startup-config? [y/n]: y Saving all configurations to NV-RAM.......... Done. # # show stack Stacking Mode : Enabled Stack Preempt : Enabled ※プリエンプトモード有効 Trap State : Disabled Port-channel mode : All Stack-port load-balance: default Version check : Enabled ※スタックメンバーのバージョンチェック処理は有効 ~~省略~~