APRESIA Systemsのローカル5Gの取り組み

モバイル通信事業者の5Gサービスがいよいよ始まりました。その一方、企業や自治体、大学などで関心が高まるのがローカル5Gです。超高速・大容量、超低遅延、多接続といった5Gの特徴を生かした自営網が可能になります。APRESIA Systemsでは可能性の広がるローカル5G市場にいち早く参入、その取り組みを紹介します。

4Gのフロント・バックホールのノウハウをローカル5Gに活用

IoTとエッジクラウドとの低遅延・多接続といった通信ニーズの多様化や、工場内の生産ラインや農地の栽培データの収集といった場所や目的に応じた柔軟な利用環境の実現に向け、ローカル5Gが注目されています。

モバイル通信事業者が提供する5GサービスでもIoTなどの利用は可能ですが、サービス開始当初は5Gサービス提供地域が限られていることや、膨大なIoTデバイスを接続するとコストがかさむ懸念もあります。加えて、企業や自治体、大学などのユーザー自身で柔軟に5Gネットワークを構築・運用したい、安定的に帯域を確保したい、セキュリティを担保したいといったニーズに対応するには、自営網のローカル5Gが適しています。

期待の高まるローカル5Gですが、周波数の割り当てがようやく動き出したところです。2019年12月に周波数28.2G〜28.3GHzの100MHz幅が割り当てられました。2回目は2020年末で、周波数28.3G〜29.1GHzの800MHz幅と4.6G〜4.9GHzの300MHz幅が割り当てられる見込みです。

こうした状況の中、APRESIAではローカル5G市場にいち早く乗り出しました。「APRESIAがなぜ、ローカル5Gなの?」と思う方もいるかもしれません。実は、当社にはこれまでモバイル通信市場で積み重ねてきた実績とノウハウがあるのです。4Gのフロントホールのトラフィックを集約してバックホールにつなぐイーサネットスイッチとして「Apresiaシリーズ」が採用されていることも、その一例です。さらに固定系通信キャリアからローカル5G対応機器を開発・提供してほしいとの要望があり、有線ネットワークだけではなく、無線ネットワークでも技術開発を続けてきた経緯があります。

APRESIA Systemsのローカル5Gの取り組み

APRESIA Systemsのローカル5Gの取り組み

ローカル5Gの事前検証に適したPoCシステムを開発

当社が取り組むローカル5Gは、4.6GHz帯のSA(Stand Alone)方式に対応する製品を開発・提供します。4Gサービスを提供する既存のモバイル通信事業者は当初、4Gネットワークを使って制御用データを送信するNSA(Non Stand Alone)方式を採用します。ローカル5Gの導入を計画する企業・自治体などは、5Gのデータ制御用に自前で4Gネットワークを構築することは現実的ではなく、SA方式の採用が見込まれています。

そして、フェーズ1とフェーズ2の2段階に分けてローカル5G対応製品を提供する計画です。フェーズ1は4.6GHz SA方式に対応する検証用のPoCシステム。当社が開発したOSSベースの5Gコアと連携会社のRAN(UE無線端未とgNB無線基地局)製品を相互接続したPoCシステムで、移動通信システムの標準化組織3GPPが仕様を規定したリリース15に対応します。

ローカル5Gの導入には事前検証が必要ですが、大手モバイル通信機器メーカーのPoCシステムは高額で、検証するにもコスト面が障壁となる懸念があります。そこで、当社と連携会社のPoCシステムは機能や実装プロトコルを限定した簡易な検証システムでコストを抑え、SA方式のローカル5Gをまず試してみたいという企業・自治体にとって最適なシステムとなります。また、当社のラボにもPoCシステムが設置され、企業はローカル5G用の端末やアプリケーションを持ち込んで事前評価が行えるようにします。

開発製品イメージ

開発製品イメージ

オンプレミスとクラウドに対応する統合製品をフェーズ2で開発

フェーズ2はCU(Central Unit)機能やDU(Distributed Unit)機能などRAN技術を当社のネットワーク製品に組み込んだ統合型ローカル5G製品を開発する計画です。ソフトウェアのOSSをベースに開発し、統合製品のスイッチにローカル5GのRU (無線アンテナ)や社内ネットワークを接続してローカル5Gのネットワークを構築できます。

統合製品の特徴は、CU機能やDU機能を含め、自社開発することにより、企業・自治体などはローカル5Gの柔軟な配置と運用が可能になることです。例えば、工場やキャンパスネットワークにDU機能が実装された統合型製品をオンプレミスで導入したり、クラウド側にCU機能と5Gコアを実装したサーバーを配置して工場やキャンパスネットワークの統合製品を集中管理したりするなど、自由度の高いネットワーク設計と運用が可能です。

企業が自社データセンターに統合製品を配置し、各地に分散する工場のローカル5Gネットワークを運用したり、固定系通信キャリアが自社のクラウド上に統合製品を設置し、企業向けにローカル5Gサービスを提供したりすることも可能になります。2021年3月に製品をリリースする計画です。

有線とローカル5Gを融合したソリューションを提案

企業や自治体、大学などのネットワークは、当然ながら、ローカル5Gの無線ネットワークだけで構成されるわけではありません。ローカル5Gの無線ネットワークと有線ネットワークを接続してIoTデータなどを処理します。また、超高速、超低遅延といったローカル5Gの特徴を生かすためには、既存ネットワークの見直しが必要になることも考えられます。

ローカル5G市場における当社の強みは、エンタープライズや通信キャリア向けに提供してきた有線ネットワークの技術や知見と、新たに始まる無線ネットワークのローカル5Gを融合したソリューションを提案できることです。例えば、Apresiaシリーズのソフトウェア開発や品質管理などで培ってきた技術、ノウハウを生かし、ローカル5Gのソフトウェア品質を担保するといった取り組みも可能です。

そして、ローカル5Gのアプリケーションとして期待されるのがIoT分野です。当社ではAI技術などを持つ企業と連携。例えば工場内の生産ラインの画像を監視カメラで撮影し、その画像データをローカル5G経由でエッジクラウドのAIサーバーに送信。AIが瑕疵のある部品の画像を判定し、異常検知が行えるエッジAIなどのソリューションを今後、提案することも考えられます。

また、パートナー企業と連携し、ローカル5Gと組み合わせて超低遅延のエッジコンピューティングを可能にする自律型エッジクラウド(データセンター)や、スイッチの光ポートに接続してローカル5Gのフロントホールを低コストに構築できる10G-PON搭載光トランシーバーなど、ローカル5G周辺のソリューションにも注力していきます。ぜひ、ご期待ください。